新学期がはじまって間もないある日。
3歳で入園したばかりの女の子が目に涙をいっぱいためて不安そうに泣いていました。
それを見ていた5歳の女の子がそっと近づき、頭をなで、顔を覗き込み、泣いている子の手をそっとにぎりました。それでも泣きやまない子の顔を覗き込み、しばらく手をつないだまま傍で立っていました。頭を撫で、手をつないだまま傍に寄り添っていましたが、やがてその子に背を向けてしゃがみこんだのです。すると泣いていた子は5歳の女の子の背中におんぶし、首に抱きついて行きました。
「よいしょ」とおんぶして立ち上がった5歳の女の子は、少しよろよろしながら小さい子のお部屋に歩き出したのです。泣いていた子は5歳の女の子の背中に頭をくっつけて、安堵の表情に変わっていました。それを見届けた私は、なんて素敵な子たちだろうと感動してしまいました。
大人は、何とか泣きやませようとして、言葉で励ましたり、慰めたりすることがありますが、それは一見子どものためのように見えますが、実は泣きやんで欲しいという大人の側の願い(要求)なのです。
子どもが泣きたくなった「こころもち」つまり、不安だとか怖いとか分らない事があるとか、思うようにならない、泣かずにはいられないその気持ちを解ってほしいのです。
そのことが解ってもらえれば、また頑張る気持にもなれるのです。そして泣きたくなっている気持ちを言葉で言い表せないもどかしさに苦しんでいることすらあるのです。
目があったら微笑んだり、そっと手を繋いだり、そんなささやかなことがどんなに心にしみて素敵なことか。先ほどの5歳の女の子は自分の経験からその「心もち」を大切にして行動したのでしょう。
このように幼稚園は子ども同士で育ち合う場であり、教師も子どもの「心もち」を大切にしながら、自ら育とうとしている子どもを支え、子どもが新しい活動にチャレンジしていけるように導いていく場でもあるのです。
※フリーペーパーGIFUTO(4月号)に掲載
(子育てについて取材を受け原稿を提供しました)